着物の格について知りたい―どんなシーンでどんな着物を着るの?

着物には格があり、好きな着物をどこにでも着て行っていいというわけではありません。場に合った着物を選ぶには、どんな着物が格が高く、正装と呼ばれるのかなど、それぞれの着物の格について知るのは不可欠!

このページでは着物の格と着ていける場所についてご紹介します。

フォーマルな場の着物

フォーマルな場というのは、正装が必要な場所で、結婚式や叙勲の授賞式などの式典、その他にお茶会やおめでたい儀式の場などが挙げられます。


フォーマルな着物には、留袖や振袖、訪問着などがありますが、中でも紋をつけたものが正装とされており、一番格が高いのは、五つ紋(染め抜き日向紋)になります。

格の高い順に五つ紋、三つ紋、一つ紋となり、紋の入れ方にも種類があって、染め抜き紋、描き紋、縫い紋、加賀友禅紋、加賀縫い紋、貼り付け紋があります。

また、染め抜き紋には日向紋と陰紋があり、陰紋は略式になります。(>紋について詳しくはこちらの記事へ

正装にも3種類あり、格が高い順に、第一礼装、準礼装、略礼装となります。

第一礼装

結婚式や披露宴で着る、一番格の高い着物です。

留袖

既婚女性の第一礼装です。留袖には2種類ありますが、宮中の行事では黒留袖の黒は喪の色とされているので、宮中に参内する叙勲の授賞式などは、色留袖が正式とされています。

黒留袖は民間の正装となります。

黒留袖

地模様がなく地色が黒に染められ、腰より下の位置に絵羽付け(生地の継ぎ目も図柄が繋がっている)の模様が入っています。五つ紋(染め抜き日向紋)をつけるのが正式です。

結婚式や披露宴で、新郎新婦の親族や仲人が着用します。

色留袖

黒留袖の黒で染められた地色が黒以外の色に変わった着物が色留袖で、五つ紋のほかに、三つ紋、一つ紋をつけることができ、略礼装としても着用することができます。

結婚式や披露宴で新郎新婦の親族や、宮中での行事、格式ある祝賀会やパーティーなどに着用します。

振袖

振袖は、未婚女性の第一礼装になります。絵羽模様が正式ですが、柄が絵羽付けになっていない小紋のような振袖が、最近では登場してきています。

振袖には大振袖(本振袖)、中振袖、小振袖と3種類あり、袖が長いほど格が高くなります。

成人式、卒業式、結婚式、披露宴、表彰式やパーティーなどに着用が可能です。

大振袖(本振袖)

全体に絵羽模様になっているものが正式で、本来は五つ紋をつけますが、現在では紋の入っているものはほとんどありません。

婚礼衣装など、袖丈が約114cm前後のものが大振袖と呼ばれています。

中振袖

大振り袖よりも袖丈が短く、絵羽模様になっているのは同じです。

近年、成人式に着用するのは中振袖が主流で、袖丈が約100cm前後のものです。

小振袖

袖丈が約85cm前後で絵羽模様になっているものは、礼装として着用ができ、卒業式に袴と合わせることの多い着物が、この小振袖です。

喪服

黒一色で五つ紋をつけた着物で、黒紋付とも呼ばれる喪の第一礼装です。

葬儀や告別式で、喪主、家族、参列者など既婚、未婚問わず着用するための着物になります。

準礼装・略礼装

正礼装の次に格調が高く、披露宴や式典で使用できるのが準礼装です。

準礼装の次に格が高いのが略礼装で、正礼装ではかしこまりすぎていると思うようなあらたまった席(お茶会、お見合いなど)で使用します。

訪問着

肩、裾、袖に絵羽付けで模様が入った着物です。

一つ紋か三つ紋を付ければ、既婚、未婚を問わず準礼装として、披露宴や表彰式、お茶会、お見合いなどあらたまった席や、あらたまった訪問に着用ができます。

付下げ

付下げは、肩に向かって上向きの柄が模様付けられた着物のことです。

訪問着と似ていますが、必ずしも柄が絵羽付けされていることもなく、生地と生地の縫い合わせの箇所では、柄を外していることもあります。

格は略礼装となりますが、見た目には訪問着と近いこともあり、訪問着と同じような用途で着用されることが多くなってきています。

略礼装の着物なので、格式張らない一つ紋を入れることがありますが、入れなくても略礼装として扱うことができます。

色無地

色無地は全く柄が無く、一色で染められた着物のこと。

準礼装とするなら三つ紋、略礼装とするなら一つ紋を入れると良いでしょう。

既婚、未婚を問わず着用ができ、合わせる帯の色や柄によって、格が変わってきます。

入学式、卒業式、七五三、お茶席などで着用します。

江戸小紋

江戸小紋は、細かな模様を型染めしたもので、模様が非常に細かいので、遠目には無地に見えます。

そのために、小紋と名前がついていますが、色無地と同じように扱うことができ、一つ紋が用いられ、略礼装として着用されます。

カジュアルな場の着物

カジュアルな場とは、格式張らない、形式張らない場所で、初詣や友人との食事、観劇や同窓会など洋服であれば普段着でも行ける場所のことです。

糸を先に染めてから反物を作る、織りの着物です。しっかりとした生地で、温かみのある素朴さが魅力ですが、最近では訪問着のように絵羽模様のものもあります。

しかし、紬の場合は礼装として着用はできません。お洒落な外出着として楽しみましょう。

小紋

全体に絵羽付けされていない柄があり、デザインや色が豊富で、多彩な着こなしが楽しめる着物です。

気軽に普段着として着用できるために、半幅帯で浴衣を着た時の帯結びで、簡単な着こなしも楽しめます。

浴衣

普通の着物とは異なり、長襦袢を使わずに素肌の上に直接着用する略装です。

平安時代に沐浴をするために着られていた麻の着物が原型なので、お出かけ着と言うよりは、夏に普段着や家庭着として着るための着物になります。

夏祭りや盆踊りなど、カジュアルな場であれば、おしゃれ着として楽しむこともできます。

まとめ

着物の格は、着物を着用する時のルールであり、その場で同席する方々への配慮と礼儀でもあります。

高価な着物だからといって、あらたまった場所に着用していけるものではないので、ルールに沿ったものを適切な場所で着用するようにしましょう。

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